米澤 和洋 よねざわ かずひろ

写真

卓球選手をサポートすることになったきっかけは?

 1994年の卓球アジア競技大会が広島で開催されたのですが、このとき、卓球協会のほうでメディカルをサポートできる人間を探しているということで私の友人に問い合わせがあり、それならばということで私に話しが回ってきました。当初のサポート内容は、ウォーミングアップの補助と大会期間中の身体のケアについてサポートすることでした。私は鍼灸等の治療は出来ませんが、私のできる範囲の中でできる限りのサポートをしていました。食事をはじめ体調を整えるために必要なさまざまなアドバイスも必要であれば行ないました。当時は急なことでしたので、大会中に選手が待機する場所へ入るためのIDが発行されず、非常に限られた場所でのサポートでした。しかし選手達の戦う姿勢は素晴らしく、卓球という競技の魅力に取り付かれていきました。
 当時はナショナルチーム制度を置いておらず、世界大会の3ヵ月前に代表選手が集合して合宿を行ない、大会が終了すれば各々の母体に帰って更に強化練習を行なうというのが代表の形でした。当然私も大会が終了すれば役割が終了します。そういう部分的なサポートでしたが、選手からの連絡や監督からの質問が徐々に増えていきました。そんな中うれしいことに、次の世界選手権にもチームへ呼んでいただき、サポートさせていただきました。さらに1996年のアトランタオリンピックに帯同するお話をいただき、お引受けしました。

ロンドン五輪は10年計画の総まとめ

 過去日本は卓球王国と世界から言われていた時代があります。しかし1979年を最後に世界大会からはメダルを獲得出来ていないということで 1997年に、ナショナルチーム制度が復活し、そのためにスウェーデン人のコーチが招聘され、毎月のように合宿を行ない、強化を試みました。それが功を奏し、2000年のマレーシアでの世界卓球選手権団体戦では、男子が19年振りに銅メダルを獲得しました。しかし、その翌年の大阪での世界大会では過去ワーストの13位となり、その頃の中国のように若手の発掘と長期の育成に主をおかねば戦いきれないということからナショナルチームが見直されることとなり、委員会が設けられ、スタッフ陣の配置や育成プログラムなど、詳細がここで話し合われました。その結果、10年を一区切りとした長期計画で選手発掘と育成が始まり、2002年の一期生として、水谷隼選手や岸川聖也選手、女子では石垣優香選手が選ばれました。したがってここで選ばれて来た選手は今年で10年となりこのロンドン五輪は総まとめとも言えます。

写真

現在の卓球ナショナルチームへのサポート内容は?

 私の現在の役割は、ナショナルチームのコンディションを統括する立場となりますので、各選手の体調管理等について情報を収集して管理しています。他の競技においては、オリンピックの周期である4年に一度、チーム体制を見直すケースが多いのですが、我々卓球チームは前述のとおり、10年計画を基に動いておりますので、基本的にスタッフはほとんど変わっていません。であるからこそ、今回のロンドン五輪で選手に良い結果を残してもらうことが至上命題です。

長い年月をかけてじっくりと育ててこられた

 特に、水谷選手にとって2回目となる今回のオリンピックにおいて、メダルの射程圏内にもっていくことが我々には強く求められています。彼を中心にしてチームが育ってきたといっても過言ではありません。10年という長い年月をかけて、じっくりと選手を育ててこられたというのは、世界基準の強化ですし、非常に良い点だと思います。短期的な試合の結果で全てが判断されてしまうと強化にはなりません。もちろん手探りの部分も多かったですが、その都度スポーツ医科学委員会の素晴らしい先生方のサポートもありもろもろ改善を図ってきました。

写真

選手の現在のコンディションについてお話しください。

厳しいトレーニングと休息のメリハリを

 男子選手についてからですが、6月10日まで神戸でジャパンオープン選手権があり、その後は少し疲労がみられていました。しかし、ロンドンへの出発日である7月20日深夜に向けて、すでに合宿が組まれ、練習やトレーニングの強度について選手と話し合いながら調整していますので、万全の態勢で臨めることが出来ると思います。選手には、大会当日にピークを持っていくためにはここで強度を上げておかねばならないということをしっかり伝えたうえで、厳しいトレーニングにも取り組んでもらいます。休むときは休み、こうしてメリハリをつけて、それを選手が理解し、一体となって当日を目指していきます。
 3年前に田中礼人コンディショニングコーチが加入し、お陰様で、1年を通して合宿のサポートを行なえる体制が整いました。トレーニングプログラムやウォームアップを話し合い、常に管理した中で準備を行なっています。この体制は宮ア義仁監督のお考えによって保たれており、コーチ陣とも連携がとれています。トレーニングの内容についてはウェイトトレーニングも行なっていますが、基本的にはコンディショニングトレーニングとして卓球場で取り組めるように環境を整えています。また定期的にフィジカルチェックを行ない、このデータに基づいてプログラムをデザインします。

チームや選手のアピールをお願いします。

 私は監督ではないので選手の技術については細かくは言えないのですが、期待する点として、それぞれの代表選手についてお話しさせていただきます。まずは水谷隼選手です。水谷選手は日本人の世界ランク最高位です。10年前に発掘され、育成の拠点を当初ドイツに置いていました。4年前に帰国し、大学に通いながら中国へも武者修行に出かけています。そうして磨かれてきた彼の球への感覚の鋭さはやはり抜群のものがあります。また、彼の素晴らしさは何といっても全体的なバランスだと思います。フィジカルも素晴らしく、それを活かす頭脳的なプレーも可能です。持ちうる能力をしっかり出せる選手ですので、ロンドンでは良い結果を出せるよう期待しています。次に岸川聖也選手です。岸川選手は水谷選手の2つ年上で、彼の持っている打球感(手の感覚)も世界トップクラスです。おそらく男子ダブルスで高校生の丹羽孝希選手と組みますが、彼をうまく引っ張っていきながらもその素晴らしい打球感で世界をあっと言わせて欲しいと思っています。最後に丹羽孝希選手です。彼はまさに未完の大器です。どれほどの潜在能力を持っているのか図りしれません。今後の卓球界を背負っていくべき選手に育つと思いますので、今回、精一杯がんばって良い経験を積んでもらいたいと思います。
 次に女子選手です。まずは福原愛選手ですが、彼女は経験豊富ですし非常に賢い子ですから、さまざまな要因をプラスに変えてベストを尽くしてくれると思います。次に石川佳純選手ですが、彼女はまだ若いものの、持っている能力は世界トップクラスです。当日素晴らしいパフォーマンスを出してくれるのを期待しています。最後に平野早矢香選手。彼女もこれまでの集大成となる大会だと思いますので、とにかく当日のコンディションをしっかり整えてプレーしてほしいですね。

悔しさと想いを結集させてロンドンへ

 当然、すべての選手にメダルが求められてきますが、なかなか狙ってとれるものではありません。各選手がベストを尽くした結果としてついてくればと考えています。北京五輪の際、ドイツを相手に、あと1点取れれば銀メダル以上が確定するというところまでいきました。しかし、結果はその1点が取れずに5位という結果でした。この1点は、選手の能力だけではなく、関係者すべての想いがかかわっていると思います。また、我々はこれまでの長い歴史の上に立っていると思いますので、前回の悔しさと想いを結集させてロンドンではがんばってまいります。


インタビュー:2012年6月17日