甲谷 洋祐 こうたに ようすけ

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全日本女子バレーボールチームをサポートすることになったきっかけは?

 大学卒業後、米国へ留学し、インターンシップを経てATCを取得しました。1999年に大学時代にもお世話になっていた、NECレッドロケッ ツの岩崎由純氏にご紹介いただき、全日本女子バレーボールチームに帯同しました。当初はアスレティックトレーナーとしてのサポート中心でした。その後、再度渡米し、大学院に入学して学ぶ中で、Robb Rogers氏(元米国NSCA本部スタッフ)にお会いし、S&Cに関して多く学び、その重要性を強く感じました。大学院を修了し帰国後、ラグビートップリーグ、バレーボールVリーグなどのチーム所属を経て、2009年に再度全日本女子バレーボールチームのS&Cコーチとしてサポートさせていただくこととなりました。

 バレーボール競技、特に女子は、まだまだ海外の選手と比べるとフィジカルの面で劣るケースが多いと思います。日本国内では、フィジカル面がある一定まであればバレーボールスキルで戦えることができると思います。 しかし、海外の選手はスパイク、ブロックのパワーに加え高さもあります。 海外の選手と戦うためには高いバレーボールスキルに加え、フィジカルも同等に持ち合わせていなければいけないと思います。私が今のチームに携わらせていただいてから、ストレングストレーニングも私流ではありますが、導入することができ、またコーチ陣の協力もありフィジカル面もある程度高まってきたと思います。

シドニー五輪後、全てを変えるつもりで取り組んだ

 今回眞鍋ジャパンに関わらせていただきましたが、1999年〜2002年も全日本女子バレーチームにかかわらせていただいておりました。2000年のシドニーオリンピックではまさかの予選落ちで史上初めてオリンピックに出場することができませんでした。非常に悔しい思いをし、全てを変えるつもりで再渡米、大学院進学をしました。そして、ラグビー等の他競技にかかわらせていただいた経験も含め、様々な取り組みをこの3年半行ないました。

ロンドンではどのようなサポートをされましたか?

 ロンドンには、予選リーグ初戦、アルジェリア戦(7/28)の1週間前に入りました。その前に事前合宿を8日間スイスで行ないました。 ロンドンでは、予選リーグ中も含めて、チーム全体では2回のストレングスセッションを組むことができました。2010年世界選手権や2011年ワールドカップでは、試合スケジュール上十分なストレングスセッションを行なうことができませんでした。しかし、オリンピックでは試合の組み合わせにも恵まれ、充実した調整を行なうことができたと思います。第2戦のイタリア戦にピークを合わせ、初戦アルジェリア戦の一日前に高強度で行ない、その後イタリア(7/30)・ドミニカ共和国(8/1)・ロシア(8/3)と予選を重ね、ロシア戦後にもう一度セッションを組み決勝トーナメントにピークを合わせることができました。
 ロシア戦後のセッションでは、私が交通トラブルなどで選手村に行くのが遅れてしまったのですが、選手全員が事前に渡していたメニューを自主的にしっかりこなしてくれました。これには非常に感銘を受けました(選手村に到着したときには全員メニューを終えていました、笑)。

チームの連携・団結力が功を奏した

 ロンドンでの選手たちの様子ですが、尻上がりに調子が良くなっていった、というのが率直な印象です。特に準々決勝の中国戦あたりからは目覚しい変化でした。普段試合前のウォーミングアップは各自で行なっていたのですが、スイス合宿時に、選手から団結力を高めるために「皆でやりましょう」ということになっていました。招集当時はチーム全体でウォーミングアップをすることに対して抵抗を感じる選手も少なからずいましたが、オリンピックに向けチームの連携・団結力が高まり、チーム全体として士気を高めて行けるようになったと思います。

ロンドンオリンピックでの結果に対する感想をお聞かせください。

 結果は目標としていたメダルを獲得することができ本当に嬉しく思います。個人的には、竹下佳江選手がメダル獲得をできたことが凄く嬉しいです。私自身スタッフとしてシドニーオリンピックでは予選敗退と悔しい思いをしましたが、竹下選手はもっともっと悔しい思いをしたと思います。それだけに凄く嬉しかったです。

選手とスタッフ間の連携、チーム全体でとったメダル

 監督やコーチが非常に勉強熱心な方ばかりでした。特にコーチ陣はS&Cのセッションにも選手と一緒に参加し、選手と同じメニューをこなして下さいました。その感覚とトレーニング中の私のコマンドをしっかりと競技練習で伝えて下さったので、バレースキルとS&Cの情報・感覚共有が理想的な形でなされたと思っています。選手とスタッフ間の連携も素晴らしく、チーム全体でとったメダルだと思います。
 一方で、私個人としては、もっとチームのスタッフとしてできたこともあるかもしれないと後から思い返すことがたくさんあります。現場では色々な要素を考慮したサポートをしていましたが、もう少し大胆にできた部分、配慮したほうがよかったと思う部分があります。これは今後引き続きチームをサポートさせていただくことになった場合の課題としてクリアしていきたいと考えています。

 今回のチームでは、サポート期間中に前十字靭帯を損傷してしまった選手が出てしまったのですが、それ以外のけが、特に腰痛など疲労から来る障害は格段に減った、ということをメディカルスタッフから聞きました。選手たちがトレーニングの中で身体の使い方を理解し、しっかりと管理できたからだと思っています。

全日本女子バレーボールチームの今後と甲谷さんの抱負をお願いします。

スタッフ陣とのコミュニケーションにより、より良いチームケミストリーを作り上げる

 先ほどもお話しましたが、個人的には後から考えると、まだ色々できたのではないかと思う点はありますので、引き続きサポートさせていただくことになった際にはより良い形で指導できるようにしたいと思っています。
 S&Cの部分に関して言えば、次回のオリンピックまでに、ストレングスコーチが暴走するのではなく(笑)、S&Cではこの3年半積み上げてきたシンプルなことの追求と、より競技に直結した、スキル練習と連動できるようなメニューもコーチ陣と話し合い、導入していきたいと考えています。そのためには、スタッフ陣とより密接なコミュニケーションにより、より良いチームケミストリーを作り上げることが必要だと思います。

 今回のオリンピックは銅メダルということで、チームとしてはまだまだ目指す先があります。もし再度お話をいただけるのであれば一番良い色のメダルを獲得できるように、全力でサポートしていきたいと思います。


インタビュー:2012年9月25日